先日、中小企業支援機関情報交換会にて、中小企業診断士による支援事例発表という貴重な機会をいただきました。今回の登壇では、直前の蔵前達郎先生の『三位一体の事業承継支援』に続き、事業承継の「その後」を見据えた支援の実践エッセンスをお話ししました。
中小企業支援機関情報交換会は、TKC大分支部と大分県中小企業診断士協会が毎年共催しているもので、今年は10年目の節目の年になります。
支援の「常識」が捉えきれていない社長の真の不安
多くの支援者が「事業承継」を資産と権利の承継という「土台」に注力しがちです。もとよりそれは大切なことなのですが、現場で社長様と深く向き合う中で気づかせられるのは、より切実な「真の不安」がその先にあることです。
それは、「後継者や幹部たちが、この会社の魂を本当に理解し、道に迷わず自力で進めるのか?」という、『未来への迷子』に対する不安と言い換えることができます。

「迷子」を防ぐための科学的なアプローチ
この不安を解消するには、精神論ではなく、科学的な『羅針盤』が必要です。私が実践しているのは、「行動を指標とする経営ロードマップ」の構築です。
このロードマップでは、行動そのものを数値化・指標化し、次世代経営チームの「やるべきこと」を共通言語化します。この指標の洗い出しには、生成AIをチェーンプロンプトとして活用し、後継者や次世代幹部との対話の中で短期間で高い精度を実現しています。
この支援は、私自身のコンサルティングの実践から、お客様のこの根源的な悩みや不安のありかに気づき、現在、お客様とともに取り組みつつあるケースのエッセンスをご紹介したものです。もちろん、まだ『成功事例』として語りきれる段階ではありません。しかし、だからこそ、この現場で生み出されている新しい支援モデルが、行動と意識の承継という不可欠なテーマを解決すると確信しています。
支援機関の皆様との「面」の連携
じつは、今日のお話の裏テーマは、「KPIという用語を使わないKPI経営」でした。私が一貫して「共通言語」と呼んでいるものが行動KPIであり、この仕組みが『次世代経営チームの羅針盤』となります。
ありがたいことに、参加された支援機関の皆様からは、「事業承継の一般的な視点とは異なる話でよかった」「発表資料を読み返して学びたい」といったご感想をいただきました。
そして、何よりも心に残ったのは、支援機関の連携の重要性が再認識されたことです。
私(長野研一)自身は、行動指標の設計と育成という「点」で企業を支えます。そして、税理士の先生方、金融機関、行政の皆様と手を携えることで、お客様を「面」で支える用意があります。
会を締め括る際、司会を務められた甲斐幸丈先生が、この「面で支える」ことの重要性を強調し、「支援機関の連携で面で支えよう」と力強く呼びかけてくださったこと。これこそが、中小企業支援の未来への羅針盤がひとつ歩を進めた瞬間であり、今回の発表の最大の喜びでした。
専門家の皆様との未来
この「行動KPIモニタリング」のノウハウは、私の共著『KPI監査』の理論的背景に基づき、税理士事務所の監査担当者や金融機関のお客様担当者様がアップセル・付加価値提供の武器として活用できるよう、教育プログラムとして体系化しています。
ぜひ、この「現場視点での行動KPI洗い出しワークショップ」のノウハウを、皆様の組織にも取り入れていただき、ともに中小企業の未来への羅針盤になろうではありませんか。
