経営者が「語る資格」と率先垂範の大切さ
第四週は、中小建設業の現場改善について綴ります。
今日は、少し立ち止まって、皆さんと一緒に考えてみたいことがあります。
皆さんは、ご自身の事業という「船」の、どんな場所に立っていますか?
同じ船に乗る、違う景色を見る
私は経営コンサルタントとして、皆さんと「同じ船」に乗っている、そう感じています。ただ、皆さんが船を動かす「船長」であるように、私は皆さんが目的地まで快適に進めるよう、海図を読み解き、風向きを予測する「水先案内人」のようなものです。
同じ船に乗っていても、見る景色は違います。
皆さんが船を操り、荒波を乗り越え、時には進路を変えなければならない大変さを知っている一方、私は外から船の様子を観察し、皆さんの航海を支える役割を担っています。
しかし、もし私が一度も船を操ったことがない、ただの「乗客」だったらどうでしょうか。
「この船は乗り心地がよくない」「もっと早く進むべきだ」と不平を言ったり、「もっとこうすればいいですよ」と机上の空論を語ったりしても、皆さんの心には響かないでしょう。
それは、乗客には船を動かすことの難しさや、そこで生まれる悩みや喜びはわからないからです。私は、そうした「乗客」の立場にとどまりたくないのです。
荒波を乗り越える「資格」
経営コンサルタントとして皆さんに伴走する「資格」とは、何だろうか。
それは、私自身もまた、皆さんが直面するのと同じような「荒波」の中に身を置くことだと考えています。
私自身の事業でも、新しいお客様との出会いを求めて泥臭い営業活動をしたり、新しいサービスを開発しては失敗を繰り返したりしています。それは決して楽なことではありません。しかし、そうした経験があるからこそ、皆さんの苦労や喜びを心から理解できるのだと信じています。
やってみなければわからないけれど、やってみれば簡単にわかることは、世の中にたくさんあります。
実践したことのないことは、どれだけ成功例のある方法論であろうと、相手にとって臨場感のあるものにはなりません。だから私は、自分自身が行動し、失敗し、そこから得た教訓を、嘘偽りなく皆さんに伝えたいのです。
率先垂範の羅針盤
これは、経営者の皆さんも同じではないでしょうか。
社員に「もっとお客様の声に耳を傾けなさい」と口で言うだけでは、彼らの行動は変わりません。しかし、もし皆さんが自ら率先してお客様のもとへ足を運び、真摯に話を聞く姿を見せたらどうでしょうか。
それは、言葉以上の説得力を持ち、社員の皆さんの心を動かすことでしょう。
社員の皆さんは「船員」です。皆さんが「船長」として、自ら羅針盤を手に進路を示し、時には汗をかき、時には泥まみれになりながらも、共に航海を楽しむ姿を見せること。
それが、チームの心を一つにし、事業という船を正しい方向に導く、最も確実な方法です。
「実践している人」の言葉は、それだけで力を持っています。
私は、皆さんの「伴走者」として、机上の空論を語るのではなく、共に汗をかき、共に悩み、共に新しい景色を見ていきたいと考えています。
皆さんの事業という船が、より良い航海になるように。
共に、進んでいきましょう。