中小建設業専門の経営コンサルタント長野研一です。
先日、あるセミナーを受講する機会がありました。
講師の方が「3分間で、自分のやりたいこと・自分にできること・お客様に求められていることを書き出してください」と受講者に投げかけ、即興のソロワークが始まりました。
私も一度はペンを手にとったのですが…すぐにペンを置きました。
3分間でスラスラ出てくるのは、いつも頭の中をぐるぐる回っているような「顕在意識にある自分の言葉」ばかりだろう、と経験的にわかったからです。
■「時間が足りない」のではない。「書き慣れていない」だけ
そもそも、この手のワークは3分でも10分でも、30分でも、あるいは1時間でも——
アウトプットに慣れていない人にとっては、決して簡単な作業ではありません。
「考えてはいるけど、言葉にならない」「伝えたいけど、まとまらない」——
そんなもどかしさを感じた経験、皆さんもあるのではないでしょうか。
■じゃあ、どうすればいいのか?
言語化が進まない人に共通しているのは、何を書けばいいのかが「感覚としてつかめていない」こと。
だから私は、こうしたワークを導入するとき、「私も書いてみました。こんな感じです。」「ある方が書いたものも、許可を得たのでお見せしますね。」と、まずいくつかの記載例を示すようにしています。
記載例があると、「なるほど、そういうことを書けばいいのか」と、感覚がつかめてくるわけです。
■「問いかけ」があれば、言葉が出てくる
さらに効果的なのが、誘い水となる問いかけです。
たとえば、こう問いかけてみると、急にペンが動き始めたりします。
「これまで、周囲の人が苦戦する中で、あなたはなぜかうまくできていた経験はありませんか?」
「“〇〇さん、そこ助かりました!”と感謝された出来事を思い出してみてください」
人は、“自分の中にあるけど、普段意識していないこと”には、質問を通してしか辿りつけません。言語化とは、問いかけの中で初めて浮かび上がってくるものでもあるのです。
■30個書くと、視点が変わる
だからこそ私は、お客様にこうお願いしています。
『当社が選ばれる理由』を、30個書き出してみましょう。
もちろん、最初から30個なんて出ません。せいぜい10個、15個あたりで手が止まります。でも、そこからが“本番”なのです。
最初は「うちのウリは〇〇です」といった“自分目線の強み”ばかりだったものが、
考え続けるうちに「お客様が本当に求めていること」「他社との違いは何か」といった視点に、自然とシフトしていく。
これこそが、30個書くことの本当の意義だと私は思っています。
■言語化が進む人は、環境に投資している
言語化がうまい人というのは、もともとの才能ではなくて、問いをくれる環境に自ら身を置いている人です。
定期的に対話の機会を持っている
書くことを仕事にしている
フィードバックを受けている
こうした環境が、思考を磨き、言葉の精度を高めているのです。
■「隠れた強み」も、言葉にしてこそ価値になる
そして最後に、こうお伝えしたいのです。
「当社の隠れた強み」というようなことも、こうした問いかけとワークを通じて、少しずつ言葉になっていくのです。
「当たり前すぎて気づいていなかったけど、実はお客様に選ばれていた理由」
「他社と比べると、うちだけが当たり前にやっていること」
…そういったことが、表現され、伝えられ、活かされるとき、はじめて“戦える強み”になります。
■まとめ:「やってみないと、わからない」
「いや、こんなワーク、3分もあればできるよ」と思う人もいるでしょう。
でも、ちょっと意地悪な見方をすれば、
「本気でやってみた経験がないから、3分で済むと思っているのかもしれない」とも思うのです。
やってみさえすれば、中学生でも気づけることなのに、
案外多くの人が気づいていない。
それは、本当にやってみたことがないから――なのだと思います。
言語化とは、「わかっていることを言葉にする」ことではなく、
「わからなかったことを言葉にする」ことです。言い換えれば、あやふやなことをはっきりとさせること。
ぜひ一度、30個書き出すワークを体験してみてください。
そして、自分の中に眠っていた「選ばれる理由」を、言葉として、手に取るように確かめてみてください。
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