中小建設業の社長が“本当の戦略”に近づくための現実的ステップ

【はじめに】「戦略的に動きたいのに、今日も一日が終わる」

中小建設業専門の経営コンサルタント長野研一です。

多くの中小建設業の社長がこんな悩みを抱えています。

「経営のことをじっくり考える時間がない」
「目の前の現場対応に追われて、計画なんて立てられない」

でも、私たちは知っています。経営が安定している会社の社長ほど、未来のために時間を投資しています。現場にいない時間を「サボっている」のではなく、「経営している」のです。

もちろん「戦略的に動く」とは、ただ空いた時間で考え事をすることではありません。今日はその本質に、一歩ずつ近づいてみましょう。


「戦略的である」とは何か――アイデアより選択の質

戦略という言葉はとても幅広い意味を持ちますが、本質は「限られた資源(人・時間・お金)を、どこにどう集中させるかの選択と決断」です。

つまり、以下のような問いに向き合うことです。

  • すべての仕事を受けるのではなく、あえて選ぶ

  • 目の前の忙しさに流されず、「勝てる分野」に力を入れる

  • 人手不足でも、「教えたほうが早い」ではなく「育てて任せる」を選ぶ

戦略的とは、思いつきや直感だけでなく、「限られた中で、どう勝ち筋を見つけるか」に知恵を使うことなのです。


時間をつくること自体が戦略である

「時間ができたら、戦略を考える」は逆です。
“時間を先に確保すること”が、すでに戦略の第一歩です。

たとえば、以下のような行動はすべて“戦略”です。

  • 自分がやっている作業を、チェックリストにして社員に引き継ぐ

  • 無理して全部の見積もりをこなすのではなく、利益率で優先順位をつける

  • 1週間に1度だけ、社長室にこもって紙とペンで「未来」について書き出す時間をつくる

「空いた時間で考える」ではなく、「考える時間をつくる」ことこそ、あなたの戦略性を支える基盤です。


とはいえ、現場は厳しい。それでもできる“一歩”とは

中小建設会社の社長が抱える日常業務は、想像以上に過酷です。現場段取り、予算管理、職人手配、顧客対応、入金確認……休む間もありません。

そんな中で「時間をつくれ」と言われても無理だ、という声が聞こえてきます。

そこで、こんな一歩から始めてみませんか?

アクション内容期待効果
一週間にひとつだけ「半年後のための行動」を予定に組み込む例:「営業ルート表」を作成し、今後の重点訪問先を整理する行動の起点を作る
毎週火曜の10時〜11時を、経営時間として予定表にブロックする事務員にも「この時間は対応しません」と伝える戦略習慣の固定化
月に1回だけ、「現場に行かない日」を設ける自分が不在でも現場が回るか検証権限移譲の布石

建設会社社長が、時間の“つくり方”で会社を変えた

ある従業員12名の建設会社の社長は、すべての見積作成を自分でこなしていました。技術的な判断が必要で、社員には任せられないというのが理由でした。

しかし、あるとき私との対話を通じて、こう気づきました。

「見積にかけてる時間のうち、60%は“手作業の流れ作業”だった」

そこで、次のように改善しました。

  • すべての見積に共通するテンプレートをつくった

  • 納まり図の指示を標準化し、若手でも起票できるようにした

  • 粗利率によって優先順位を色分け表示した

結果、見積にかける時間が月に15時間削減され、うち5時間を「営業戦略会議」に充てられるようになったのです。

彼は言います。

「戦略的になるって、“余裕ができたらやること”じゃないんですね。最初から“つくる気があるかどうか”だったんです。」


戦略的であるために、今日からできる3つの行動

では、この記事を読み終えた後、あなたが取るべき次の一歩は何でしょうか?
私は以下の3つの行動をおすすめします。

  1. “未来のためだけの時間”を週に30分だけ確保する(自分に予約を入れる)

  2. 社員に任せることを1つだけ決めて、やり方を明文化して渡す

  3. 「なぜこの仕事をするのか」を紙に書き出して、1週間だけ机に貼る

これらは、簡単で地味ですが、確実に「あなたの時間」を変え、「会社の選択の質」を変えます。


【おわりに】戦略とは、“選ぶこと”であり、“捨てること”であり、“つくること”

最後にもう一度確認しましょう。

戦略的であるとは、「すごいことを思いつく」ことではありません。
それはむしろ、以下のような姿勢です。

  • 忙しい中でも、考える時間を捨てないこと

  • できること全部をやろうとせず、やらないことを決めること

  • 今の延長線ではない未来のために、自分で時間を“つくる”こと

建設会社の経営は、現場に近いぶん戦略性を後回しにしがちです。
だからこそ、「戦略性」は差別化の最大の武器になります。


明日のあなたが、「あのときこの一歩を踏み出しておいてよかった」と思えますように。